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2019-10

大気を巨万の富に変えた科学者

化学を大学で学んだ方なら、大気中にある窒素を利用してアンモニアを作り出す
「ハーバー・ボッシュ法」という名前を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
これはその2人の化学者、フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュを中心とした
ノンフィクションで、とても面白く読めました。

大気を変える錬金術――ハーバー、ボッシュと化学の世紀

化学の難しい用語などはほとんどなく、どちらかと言うと人物や出来事ににスポット
を当てた歴史の本なので、本好きな方なら、文系理系関係なく興味深く読めると思います。

人の身体を 構成する元素という観点から見ると、炭素、酸素、水素 の3つの
元素で90%以上を占めています。
そして4番目に多い元素が 窒素 です。

窒素はDNAの中やタンパク質にあるので、人体に欠かせない元素なのですが、
炭素、酸素、水素は 水や空気にあるものを人体が利用できるといいます。
しかし窒素だけは 空気中の80%をも窒素で占められているにも関らず、空気中の
窒素は不活性な為、空気中の窒素を呼吸によって動物や植物がそのまま利用する
ことはできないのです。

動物が生きていくためには 農作物を摂取しなければなりませんが、その農作物を
育てるのが 窒素が含まれた肥料で、昔は それを動物や人の糞尿から取って
畑にまいていたわけですが、その方式(いわゆる有機農業ですね)だけでは
人口の増加に、とても対応できていないそうです。

野菜を育てたり農業の経験のある方は 分かるでしょうけど、「連作障害」というのも
あるし、動物の糞尿では その中に含まれる利用できる窒素(窒素化合物)の量が
少なすぎて、収量が落ちることになります。

この100年で世界の人口は4倍になった(60億人)のですが、化学肥料を一切
使用せず、有機農業だけをやっていたら、せいぜい40億人分の食料しか、確保できない
そうです。
ですが、実際は100年間で世界の人口が4倍になっているのに対し、農産物の生産量は
7倍になっているので、現在の私たちが(一部の地域を除いて)「飢える」こともなく、
生きていけるのは 化学肥料のおかげと言ってもよいでしょう。

化学肥料は 長い間、硝石などの窒素を含んだ岩石を採取して、そこから作られて
いました。
硝石は爆薬を作るのにも使われました。

やがてチリなど南米で岩石を大量に掘り続けてそれも枯渇するだろうということが
言われるようになり、それで大気中にある窒素と水の中にある水素でアンモニアに変え、
そこから化学肥料や爆薬を作れないか・・・という画期的な研究が始まりました。

それを実験室レベルで成功させたのがフリッツ・ハーバーで、
大量生産の工業レベルにまで発展させたのがカール・ボッシュです。

当時としては貴重な肥料や爆薬を 「空気」から作り出すなんて、まさに「錬金術」
とも言えるもので、ふたりとも 一時は巨万の富を得ますが、 祖国のドイツが
第一次世界大戦に大敗し、戦争賠償金で超インフレが国を襲い、民衆の不満がたまる
中で ヒトラーが台頭してくるあたりから、運命を狂わされることになります。

なぜなら、フリッツ・ハーバーはユダヤ人で、カール・ボッシュはユダヤ人ではない
ものの、自らの会社の研究者に優秀なユダヤ人が何名もいて、彼らへの対応で
苦悶するようになるからです。

それぞれ体調を壊し、次第に精神を病んでいったようですが、特にハーバーは
改宗してまで、ユダヤ人のアイデンティティを捨ててドイツの軍人にまでなって
第一次世界大戦のときに 世界初の毒ガス兵器(塩素)を考案して実行するなど、
ドイツの国家に尽くした化学者だっただけに ヒトラーがドイツ国家への貢献度と
いうよりはユダヤ人という「血」を排斥しようとしたことが相当ショックだったようです。

ドイツは第一次~第二次世界大戦中、世界の最先端を走る科学技術国で この
大気からアンモニアを生成する技術や、その後 ボッシュの会社で開発された、
石炭からガソリンを作る技術が もしドイツで生み出されていなければ
ドイツはもっと早くに 戦争に負けていただろうと言われています。

この本を読むと、原爆にしてもそうですが、世界最先端の科学者が 戦争にも
一役買ったりしていた当時の実情がよく分かります。

科学技術が 「人を幸せにする」ことだけに使われれば、どんなに良いことでしょう。

きっと 世界中の科学者は 本来それを望んでいるのだと思いますが、時代に
、また 国家に翻弄され、残酷な戦争にも科学者が手を貸すことが
なくなる日が来ることを 心から望んでやみません。
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